
引っ越しの荷物から出てきた古い傘が、元カノへの最後のメッセージになった理由
コラム
段ボールの底から、柄の折れた黒い傘が出てきました。引っ越しの荷造りで、こんなものまで持ってきていたのかと自分に呆れます。その傘を握ったまま、俺は半年前から開いていなかったチャット画面を探していました。
校門の記憶
高校2年の雨の日、部活帰りに校門で傘を差し出してくれた女子がいました。フードを深くかぶっていて顔は見えず、翌日も礼を言えないまま、傘だけが俺の手元に残りました。顔は見えなかったのに、俺はなぜかそれを、同じクラスにいた彼女だと決めてしまったのです。
付き合って2年。転勤の内示が出たことを言い出せないまま会う回数を減らし、「少し距離を置きたい」と切り出したのも俺です。荷造りの途中で傘を見つけ、もう会えないなら本当のことだけ伝えようと思いました。それで打ったのが「お前は俺の初恋」でした。「急にどうしたの」と返ってきて、俺は一気に理由を打ちました。
「高校の校門で、雨の日に傘を貸してくれただろ。あれからずっとだった」
私じゃないよ
返信までの間、俺は段ボールの上に座って傘の骨を直していました。届いた文面は短いものでした。
「それ、私じゃないよ。私、あの頃は自転車通学で、校門に傘なんて置いてない」
読んで、俺は傘を床に置きました。そういえば彼女は、いつも自転車のかごに合羽を入れていました。付き合っている間も、雨の日に彼女が傘を持って現れたことはほとんどなく、俺が2本持っていくのが当たり前になっていました。あれは校門の続きをやり直しているつもりだったのです。
誕生日に傘を贈ったときも、彼女は「傘が好きなんだね」と笑いました。俺はうなずいただけで、本当の意味を言いませんでした。言えば、校門の話になると思ったからです。
「……ごめん。間違えた」
それだけ打って送りました。
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