「しばらく連絡できない」とだけ送った俺→本当の理由は、試験より去年のことでした

コラム

「私、何かした?」と届いたとき、俺はようやく自分が送った文面を読み返しました。消してしまった長い文章には、彼女に言えなかった理由が並んでいたのです。

「わかった。待ってる」と届いた画面を閉じ、スマホをケースに入れました。机の上でふたを閉めると、カチリと音がして、透明なケースのタイマーが動き出しました。

アイコンを黒くしたのは俺だけではなかった

建築士の試験まで、残り3週間でした。資格スクールで知り合った2人とのグループチャットで、「試験が終わるまで、アイコンを黒にしてスマホを見る時間を減らそう」と決めたのです。スマホは、設定した時間が来るまで開かないタイマー付きのケースに入れ、1日15分だけ取り出すことにしました。

アイコンを、彼女と行った海の写真から黒一色に変えたあと、彼女にも伝えようとしました。「試験が終わるまで、スマホをケースに入れる。実は去年も受けてて」と打ったところで、画面から目を上げて天井を見ました。

去年受けて落ちたことを、彼女には言えていませんでした。受かってから話そうと決めていたからです。長い文章は全部消して、結局送ったのは短い知らせだけでした。

「しばらく連絡できない」

15分の間に読むだけの日々

すぐに「え、どうしたの?何かあった?」と返ってきました。入力欄に「試験が」とだけ打って、その先が続きません。試験だと書けば、「いつから勉強してたの?」と聞かれるかもしれない。そうなれば、去年も受けて落ちたことを黙っていた話まで避けられないと思いました。

次の日から、ケースが開く15分のたびに彼女の画面を開きました。「大丈夫?」のあとに、当たり障りのない話が1日1通ずつ届いていました。読むだけ読んで、返事は打たずに閉じる日が続きました。

一言でも返せば、理由を聞かれる。聞かれたら、去年のことまで話すことになる。試験が終わるまで待ってくれるだろうと、都合よく考えていたのだと思います。

  • X
  • Line