妻のハロウィンの予定に口を出した俺が、たたまれた洗濯物を見て気づいたこと

コラム

妻が出かけた日、俺は掃除機をかけながら、ある人の口癖を思い出していました。言い返されるまで、自分がそれをなぞっていたことに気づきませんでした。

洗濯物をたたむ音を背中で聞きながら、俺はソファでスマホを眺めていました。妻の弾んだ声が、ハロウィンの予定を話し始めたのはそのすぐあと。軽く聞き流すつもりだったのに、顔も上げずに返事をしてしまいました。

食卓で聞き続けた父の言葉

子どものころ、父は母が何かを買ってくるたびに、食卓で同じことを言いました。

「それ、誰の金で買ったんだ」

母はそのたびに箸を置き、黙って笑っていました。あの空気が嫌で、自分は絶対にあんな言い方をしないと決めていたはずです。

妻は週4日パートに出ていて、家事は結婚するときに2人で分けました。洗濯と料理は妻、掃除とゴミ出しは俺。ところが最近は仕事を言い訳に、自分の分の掃除を後回しにしていたのです。

顔を上げないまま返した言葉

「今度の休み、友達とハロウィン限定のパンプキンパイを食べに行ってくるね」

スマホから目を離さないまま、俺は答えていました。

「友達とランチ?俺の金で?」

本気で止めるつもりはありませんでした。自分だけ置いていかれるような、つまらない気分が口をついて出ただけです。

「自分で稼いだ金で行くんだから口出さないで」

顔を上げると、妻がまっすぐこちらを見ていました。その横には、たたみ終えた洗濯物の山。妻は自分の分をきちんと終えていて、終わっていないのは俺の分でした。

そのとき、さっきの自分の言い方が、食卓で聞いた父の言い方とそっくりだったと気づきました。どう取り繕えばいいのか分からず、言い訳を口にせず浴室へ向かいました。

  • X
  • Line