
友人への返済を、毎回わざと少しだけ残していた私。最後の100円を手放せなかった理由
コラム
封筒の中のメモ
イタリアンのお店で、友人が先に「あとで返すから払っといて」と言ったとき、私は黙って財布を出しました。これで今度は彼女が私に借りを作ることになると思って少しほっとしている自分がいました。
けれど、店の外で渡された封筒には、友人の分のお金と、メモが1枚入っていました。9回分の日付と店の名前、私が残した金額。最後に、合計7,640円。
「私の分は全部、今返すね。そっちの残りも、今日で終わりにしたい。次からは、その場で別々に払おう」
私にとっては次に会うための口実でも、彼女にとっては1回ずつ丁寧に記録するしかなかった負担だったのだと、メモの几帳面な文字を見て痛感しました。
お金を出しながら、それでも口から出たのは「100円だけ、次にさせて」でした。
「だめ。全部」
うなずいて、100円玉を友人の手に置きました。
そして...
駅までの道で、「またね」が言えませんでした。全部返したあとの「またね」を、まだ信じきれていなかったのだと思います。理由も、友人には話せていません。
あれから2週間、メモは財布のお札を入れる側に挟んだままです。友人とのチャット画面を開き、「今度ごはん行かない?お会計は別々で」と打ってはみたものの、送信はまだ押せていません。
(20代女性・販売職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)


























