5年片思いした友達に、失恋の相談を送った俺。あの日の約束を守りたかった

コラム

「その人って、私が知ってる人?」という問いに、用意していた嘘は送れませんでした。翌日、理由を聞かれた俺が返せたのは、短い答えだけでした。

スマホのチャット画面を、指先で何度も上へはじきました。探していたのは、5年前に彼女から届いた1通のメッセージです。そのメッセージを読み返してから、失恋の報告を打ち始めました。ただ、送った先で何が起きるかまでは、考えが足りていませんでした。

3日前に届いた答え

彼女とは大学のゼミで知り合って、5年になります。その5年のほとんどが、彼女への片思いでした。

気持ちを確かめたくて、3日前にメッセージを送ったのです。

「好きな人とかいるの?」

「いないよ。今は恋愛いいや、友達と遊んでる方が楽しいし」

返ってきた文面を読んで、スマホを枕元に伏せました。5年かけても、彼女にとっての俺は一緒に遊ぶ友達のままでした。

諦めようと決めたとき、ある約束を思い出しました。知り合ってすぐの頃、彼氏と別れた彼女から、こんなメッセージが届いていました。

「次どっちかが振られたら、一番に報告ね」

それ以来、彼女は失恋するたびに真っ先に連絡をくれました。俺の番が来たのは、これが初めてでした。

送れなかった嘘

相手が誰かは言わずに、報告だけするつもりでした。

「好きな人に振られた」

「ちょっと話聞いてくれる?」

すぐに届いた彼女の返信は、相手がどんな人なのかを聞くものでした。

「ずっと近くにいた人。5年くらい片思いしてた」

「告白したの?」

「してない。好きな人いるのか聞いたら、今は恋愛いいやって言われた」

「友達と遊んでる方が楽しいって」

送ってから、3日前の彼女の文面をそのままなぞっていたと気づきました。取り消すかどうか迷っているうちに、次のメッセージが届いたのです。

「その人って、私が知ってる人?」

「知らない人だよ」と打っては消し、「職場の人」と打ってはまた消しました。既読をつけたまま、送れる嘘は一つも残っていませんでした。

「うん。一番よく知ってる人」

「ごめん。忘れていいから」

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