
息子と別れた彼女へ、私が毎年年賀状を書いていた本当の理由
コラム
息子にも言わずに、毎年1枚だけ出してきた年賀状。秋に届いた報告はがきを見て、今年で最後にしようと決めた私のもとに、思いがけない返事が届きます。
筆ペンのキャップを開けては閉め、書き損じたはがきをテーブルの端に3枚重ねました。宛名はとうに書き終えているのに、裏に添える一言だけが決まりません。相手は、5年前に息子と別れた女性でした。
台所のテーブルで聞いた話
息子が初めて彼女を家に連れてきたのは、付き合って最初のお正月です。台所のテーブルで、届いた年賀状を家族ごとに分けていると、彼女が手伝ってくれました。自分の分の束がないのを見て、彼女は笑いました。
「私宛ての年賀状って、毎年ほとんど来ないんですよ」
あとで息子から、彼女の両親は温泉旅館で働いていて、年末年始は両親が働きづめだと聞きました。お正月は毎年ひとりで過ごしてきたそうです。明るく言われた分だけ、その話は私の中に長く残りました。
息子には言わずに出し続けた
転勤が決まった春、息子がメッセージで彼女に別れを告げたと聞きました。理由を聞きたい気持ちはありましたが、2人のことに口を出せる立場ではありません。
次のお正月が近づいたころ、彼女の郵便受けのことを考えました。今年は、誰からも届かないのかもしれない。せめて元日に1枚は届くようにと、年賀はがきを買いました。
息子の名前は書かないと決めていました。添えたのは、寒い時期の体を案じる短い言葉だけ。出していることは、息子にも言いませんでした。
彼女からは毎年、印刷の挨拶に一言だけ手書きを添えた返事が届きました。それを1枚ずつしまってきたのが、お菓子の缶です。
この秋には、新しい名字と引っ越し先の住所が印刷された、結婚の報告はがきが届きました。
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「最後」と書けなかった一言


























