「着いた?」を3時間読めなかった俺、彼女の家からの帰り道の坂で起きていたこと

コラム

坂の途中で拾い上げたスマホは、画面に大きなひびが入ったまま、もう何も映しませんでした。彼女に「着いた」と送れないまま、時間だけが過ぎていきました。
付き合って10か月になる彼女の部屋を出て、いつもの川沿いの道を歩いていました。家までは、歩いて25分ほどの道のりです。「川沿いは暗いから、着いたら絶対連絡してね」と、彼女に毎回言われている道でした。

坂の上から来た自転車

坂に差しかかったところで、上のほうから自転車のブレーキの音が聞こえてきました。振り向くと、小学校低学年くらいの男の子が、坂を下りてきました。スピードが出すぎて、ハンドルが大きく揺れていました。
俺はとっさに駆け寄り、倒れかけた自転車を受け止めました。そのはずみで俺も転び、両手のひらをアスファルトで擦りむきました。ポケットから飛び出したスマホが、地面の上を滑っていくのが見えました。拾い上げると画面には大きなひびが入り、電源ボタンを押しても何も映りませんでした。
男の子は膝を少し擦りむいただけで、大きなけがはありませんでした。

覚えていなかった番号

男の子は泣きながら、家はすぐ近くだと言いました。1人で帰すわけにもいかず、自転車を押して家まで送り届けました。出てきた男の子の母親は何度も頭を下げ、俺の手に絆創膏を貼ってくれました。そのまま引き止められ、お茶まで出してもらううちに、気づけば2時間近くが経っていました。
「どなたか、連絡したい方はいますか」
そう聞かれて、すぐに彼女の顔が浮かびました。けれど、俺は彼女の電話番号を覚えていなかったのです。
彼女は今頃、暗い川沿いを思い浮かべながら連絡を待っているはずでした。

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3時間後の一斉既読
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