
「外食のほうがマシ」と言った俺が、閉店後の厨房で隠れてやっていたこと
コラム
閉店後の厨房で、彼女のスタッフは卵の割り方から教えてくれました。外食のほうがマシと言ったあの日、本当に言いたかったことは別にあったのです。
帰ってきた彼女が、店のにおいをまとったまま台所に立ちました。洋食屋を開いて5年、彼女は家でも必ず料理をします。疲れた顔を見せないのが、昔からの彼女のくせです。その背中を、俺はソファから見ていました。
言い方を間違えた一言
前の週、彼女はエプロンを着けたままソファでうたた寝をしていました。
台所で立ったまま、残り物を口に運んでいる姿も見ています。
店でも家でも料理をして、彼女が座っている時間はほとんどありません。
今日くらいは休んでほしいと思ったのに、口から出たのはこの言葉でした。
「外食のほうがマシ」
「お店の料理より、家のごはんがいいって言ってたよね」
彼女にそう返され、俺はとっさに言い足しました。
「今日は外で食べよう」
「じゃあ、1人で行ってきて」
そう言われて、休んでほしいとは言い出せなくなったのです。
上着をソファに戻して、彼女が2人分のオムライスを作るのを黙って待ちました。
閉店後の練習
次の日、彼女が買い出しに出ている間に店へ顔を出し、スタッフに声をかけました。
彼女の看板のオムライスを、俺に教えてほしいと頼んだのです。
「店長、家でも作ってるんですか」と驚いた顔をされました。
スタッフは少し考えてから、うなずいてくれたのです。
合鍵は、仕込みの練習をしたいと言ってスタッフが借りてくれることになりました。
閉店後の厨房で、卵を何個も無駄にしました。
スタッフは、彼女が卵を返すときの手首の角度まで細かく教えてくれます。
帰りが遅い理由を聞かれても、「ちょっとね」としか答えられません。
2回目の練習で、ようやく形になったのです。
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カウンターに置いた皿


























