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彼にたくさん愛してほしいなら、愛してほしいと思ってはならない

コラム

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川口美樹


「わたしは彼に喜んでもらいたいと思って色々しているのに、彼はどうしてわたしの気持ちに応えてくれないんだろう」


とある飲み会で知り合いがそんな愚痴をこぼしており、周囲の女性が「わかるわ」「ホントそれ」と激しく相づちを打っていました。


僕はその光景を横目に見ながら、心の中で「”そう思っているから”でしょうに」とツッコミつつ唐揚げとハイボールに舌鼓を打っていました。

忘れてはいけない前提:愛は常に一方通行である

愛し合っているカップルと聞くと「感謝や気遣い、好意や優しさに溢れ、いつまでもラブラブチュッチュな関係」と言った、二人の周囲にハートマークが飛んでいるようなイメージが浮かぶと思います。


そのイメージが「愛を交換し合っている」ように錯覚させているのだと思うのですが、実際に愛し合っているカップルはお互いが一方通行の愛を飛ばし合っているだけなのです。


いえ、もはや本人たちは「愛を飛ばしている」とすら認識していないと思います。それが周囲から愛し合っていると認識されているだけで。


ホンモノの愛はすごく地味で、されたことにすら気づかないほど日常に溶け込んでいます


もし一方が「これだけ”与えている”のに、”返ってこない”」と感じているのなら、その”与えているもの”の正体は「愛」ではなく、ただの「好意」です。

好意は返ってくることがあるが、愛は返ってくるものではない

人間には「好意の返報性」という法則が働くので、与えられた好意には(それが純粋な気持ちから来ていない見せかけの好意であっても)返さなきゃという心理が働きます。


実際に、経験上「与えれば返ってくる」と思っている人も多いと思います。(例えばバレンタインデーのチョコに対するホワイトデーのお返しとか)


しかしその法則は「愛」には通用しません。なぜなら「愛」は、与えた側にも“与えた”という認識がないので、与えられた側も“与えられた”と気づかないために、返しようがないのです。


ですから、冒頭の彼女のように「返ってくることを期待している」時点で、本当に愛し合うことなんてできないのです。


もちろん、あとあとになって「あの時あの人がしてくれたことは愛ゆえのものだった」と気づくことはありますが、本人にそれを伝えても「そんなことしたっけ?」と覚えていないことがほとんどです。

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