
「家賃は全部俺が払う」と言った俺が、彼女のスマホの画面で初めて知ったこと
コラム
傾けられたスマホの画面
彼女がスマホを、俺にだけ見えるように傾けてカウンターに置きました。
「副業してるの。最近、けっこう良い感じなんだ」
画面に並んでいたのは、本の紹介文を書く仕事の入金履歴でした。顔を近づけてスクロールすると、日付が新しくなるほど金額が増えていました。
スマホを彼女のほうへ戻しても、口を開きかけては閉じるばかり。そのうちに彼女は担当者へ向き直り、差し出された申込書にペンを走らせていました。契約者の欄に彼女の名前が書かれていくのを、横から見ていることしかできませんでした。
俺のメモのどこにも、この数字は入っていませんでした。あったのは、前に聞いた手取りの話だけ。表を作っていた半年の間、彼女に「今どうなの」と聞いたことは一度もなかったのです。
左の部屋を選んだときも、彼女の通勤が何分になるのか調べていませんでした。払う側だから決めていい。それは、父が母にしていたことと同じでした。
ペンが置かれても、俺は間取り図に目を落としたままでした。
そして...
改札の手前で、俺は「帰ったら、話したいことがある」と伝えました。
俺の部屋で、表を見せて、父の口癖の話をしました。彼女は最後まで聞いて、「数字は、次から一緒に見たい」とだけ言いました。「お前」と呼んだことを謝ると、少しだけうなずきました。
寝る前に、メモの表を作り直しました。契約者の欄には彼女の名前を入れ、家賃の行は空けたまま。次に2人で開くまで、そこは埋めないことにしました。
(20代男性・システムエンジニア)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























