息子の妻が笑って言った「私はもうこっちの家の人間ですから」に、昔の自分が重なった日

コラム

息子が醤油を買いに出たあと、台所で伝えた言葉。説明を足す前に玄関の戸が開き、言い足りない思いを抱えたまま2人を見送りました。

冷蔵庫の横に貼ったカレンダーの年末の欄には、今年も息子夫婦が来る日が書き込まれていました。息子の妻が嫁いできて3年、自分の実家へ帰ったという話を、一度も聞いたことがありません。その日、台所でわざと強い言葉を選び、あの子をひどく戸惑わせることになりました。

息子の妻の背中に見えた、昔の自分

息子の妻は、いつも約束より早く来て台所に立ちます。最後の皿を拭き終えるまで、決して座ろうとしません。その間、息子は居間に座ったまま。嫁いだ頃の私と夫を、そのまま見ているようでした。

ここ数回は、あの子がスポンジを手に取るたびに皿を取り上げてきました。

「いいから座ってて」

ほかの言い方が見つからず、背中を向けて洗い物を続けるしかありません。2人が来る数日前には、息子に電話をかけ、妻ばかり台所に立たせて自分は座っているだけなのかと叱ってもいました。

その日の食卓で、煮物を取り分けながら聞いてみました。

「お正月は、たまにはご実家に帰ったら?」

「私はもうこっちの家の人間ですから」

笑顔で返ってきた言葉に、菜箸を置きました。姑から何度も聞かされた言葉と、ほとんど同じだったからです。隣で黙って味噌汁をすすっている息子を、じっと見ていました。

いちばん強い言い方を選んだ理由

「もうこっちの家の人間なんだから」

結婚した当初、姑は事あるごとにそう言いました。お盆も正月も台所に立ち続け、実家に帰れたのは嫁いで5年経ってから。帰っていいと言ってくれる人は、家の中に1人もいませんでした。

息子が醤油を買いに出たあと、その日だけは皿を取り上げず、隣で布巾を動かしながら言いました。

「息子とは別れてほしいの」

泡のついた皿を持ったまま、あの子が言いました。

「私、何か至らないことがありましたか」

「あなたのためよ。考えておいてね」

帰っていいと言うだけでは、きっと笑って流される。自分の息子を悪者にしてでも、あの子が擦り減っていくのを見ているよりはいい。そう考えて選んだ言葉でしたが、説明を足す前に玄関の戸が開き、息子が戻ってきました。

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