
私の父に「結婚は考えてません」と答えた彼→門扉を出たところで「さっきの、続きがあって」と言われた私
コラム
父の問いに、彼は少し間を置いて答えました。一番聞きたくなかった言葉のあとで、彼は何かを付け足そうとしていたのに、私は坂道を先に下りていました。
実家の引き戸が閉まる音がして、門扉までの飛び石を早足で進みました。後ろから追いついてくる彼の足音に、振り返る気にはなれませんでした。
駅からの坂道で伝えておいたこと
付き合って3年になる彼を、初めて実家へ連れていった日のことです。駅からの坂道で「お父さん、たぶん聞いてくると思う」と言うと、彼は手土産の最中の袋を反対の手に持ち替えて「分かってる」とだけ返しました。
今年に入って、友人の結婚式の招待状は3通目でした。聞かれたらどう答えるつもりなのか、彼に確かめたことはありません。確かめなくても、同じほうを向いていると思っていたからです。
湯のみを置いた父と、台所へ立った母
座卓には母の筑前煮が並び、彼は父の正面、私はその隣に座りました。料理の話がひと通り済んだころ、父が湯のみを持ったまま「それで、結婚は考えているのかな」と聞きました。
彼は箸を置き、少し間を置いてから「結婚は考えてません」と答えたのです。
父は湯のみを座卓に置いて「そうか」とだけ言い、母は「お茶、入れ直すわね」と台所へ立ちました。横を見ると、彼は父の手元に目を落としたまま、それ以上は口を開きません。
話題はすぐに庭の柿の木のことへ移り、相づちを打ちながら、取り皿のにんじんを箸で端に寄せては戻していました。3年間を数えていたのは、私1人だったのでしょうか。
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門扉の外で、彼が言いかけたこと




























