
友人に言えない秘密のために集合時間をずらし続けた私が、あの日だけ時間通りに現れた理由
コラム
「うん。今日は、ちゃんと来たかったから」。そう答えた私には、実はその日のためにキャンセルした大切な予約がありました。隠していたのは「眠気」ではなく、周りに見せたことがない「不器用な自分」だったのです。
予約のキャンセルボタンを押したのは、友人に返信を送った直後でした。画面に表示されていたのは、「この後に外せない予定があるから、集合時間は動かせないよ。無理なら次でもいいよ」というメッセージ。でも実は、動かせない予定があったのは私のほうも同じだったのです。
予約が取れた枠に、集合時間を合わせていた
友人との集合時間を何度も遅らせていた理由は、休みの日にこっそり通っていた大人向けの水泳教室にありました。レッスン予約は毎週、空きが出た時間枠を先着順で取るシステムだったのです。
予約が取れた枠が終わる時間に合わせて、集合時間を30分、時には2時間とずらし、そのたびに同じ言い訳をしていました。
「私、朝弱いからそっちが合わせて」
眠そうにするスタンプを添えて送ることもありました。ですが実際は、レッスンのある日ほど気合が入って早く目が冴えていたのです。
27歳になってから水泳教室に通い始めたことは、誰にも打ち明けていません。特に友人には絶対に知られたくありませんでした。夏に一緒に海へ行く約束をしているのに、自分だけ泳げないまま当日を迎えるのが怖かったからです。
プールサイドに残された、あの日の記憶
小学生の頃、進級テストで最後まで合格できなかったのは私だけでした。他の子が着替えを終えて帰っていく中、1人だけプールに残されて再練習をさせられたのです。
着替えを終えた友達が、フェンス越しにこちらを眺めていました。
それ以来、できないことを人に見られるのが苦手になりました。だからこそ、水泳教室に通っていることを隠すために、集合時間を無理やり変更し続けていたのです。
いつものように「時間を遅らせたい」と送った直後、友人から届いたのは「変更できない」という毅然とした返事でした。
理由を聞くこともなく断られたのは初めてのことです。私はスマホを握りしめたまま、ベッドの縁に座り込んでしまいました。断りの文章を打っては消しを繰り返します。
「わかった。その時間で行くね」
そう返信してから、私は水泳教室の予約画面を開きました。
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缶コーヒーは、待つための口実だった


























