
「はじめまして」と居酒屋で頭を下げた彼の友達は、私の元カレの弟でした
コラム
最後まで聞き返せなかった言葉
隣に座り直しても、さっきの言葉が頭から離れません。本人とは、私のことなのか。元カレと別れた経緯を、弟は兄から聞いているはずです。連絡が途絶えがちになり、最後は私から別れを切り出した。その話がどんな形で彼に伝わったのか、見当もつきませんでした。
彼は何事もなかったかのように、次の注文を店員さんに伝えていました。聞き返せばいいのに、グラスを持ち上げては、口をつけずに置き直すばかり。
改札の前で別れるとき、元カレの弟は私に向き直りました。
「今日は、ありがとうございました」
深く下げられた頭に、私も同じだけ頭を下げて応えました。
そして...
彼と並んで歩く帰り道、コンビニの明かりが近づいたところで口を開きました。黙っているほうが、この先ずっと引きずってしまう気がしたのです。
「今日の友達ね、私の元カレの弟なの」
彼は少しだけ歩く速さを緩めました。コートのポケットに手を入れたまま前を向き、何か言おうと小さく息を吸います。
その横顔を見ながら、居酒屋で聞いた声を思い出していました。あのときの「本人には言わないでおいて」は、誰を守るための言葉だったのでしょうか。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)





























