妻に台所を任された3日間。俺が冷蔵庫のメモ帳から破り取った紙に書き続けたこと

コラム

台所の引き出しを開けるたび、目当てとは違う道具が出てきました。妻から台所を任されて、まだ1日目のことです。自分の段取りなら早く終わると思っていたのですが、そう簡単にはいきませんでした。

「効率が悪い」と言った台所

システムエンジニアの仕事をしていると、何でも段取りで考える癖がつきます。妻の料理を見ていると、野菜を切っては火にかけ、鍋を洗ってはまた使う。もっと早い方法があるように見えて、気づけば口を出すようになっていました。

妻も最初は理由を話してくれました。けれど俺が「でも、効率で考えたらさ」と返すたびに、言葉は少なくなっていきました。その日も、玉ねぎを刻む妻の後ろから、つい言ってしまったのです。

「君のやり方は効率が悪い」

妻は包丁を置いてコンロの火を弱め、エプロンを外しました。

「じゃあ、今日から3日間全部任せるね」

「3日もあれば十分だよ」

本気でそう思っていました。

冷蔵庫の扉に貼られたメモ帳

初日は、妻が弱火にした鍋はそのままに、まず残りの材料を全部切るところから始めました。ところが切った野菜を並べ終えても、ごはんはまだ炊けていない。慌てて炒め物にかかるうちに、流しはボウルと鍋で埋まっていきました。料理が食卓に並んだのは、いつもよりずっと遅くなってから。妻は何も言わずに食べ終えました。

洗い物のあと、翌日の材料を確かめようと冷蔵庫を開けました。手前には使いかけの野菜、奥には下味をつけた鶏肉の保存容器。任される前に、妻が用意していたものです。

扉に貼られた買い物メモ用のメモ帳から1枚破り取り、「次の日の分は、前の日に下ごしらえ」と書きました。

2日目からは、妻がいつもしていた順番を思い出しながら動きました。ごはんと汁物を先に火にかける。煮ている間に鍋を洗う。それだけで、流しが空いたまま仕上がっていきます。気づいたことは、そのたびにポケットの紙へ書き足しました。

途中で妻が「手伝おうか?」と声をかけてくれましたが、返したのは「大丈夫」の一言だけ。最後まで自分の手で確かめたかったのです。

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