「その服、似合わない」が口癖の彼→彼が選んだ服で出かけた日、商店街ですれ違った彼の母の一言

コラム

彼が選んだのは、いつもの私の服と色も形もほとんど変わらない1枚でした。それを着て歩いた商店街で、彼の母がかけた言葉の意味を、私は測りかねていました。

クローゼットの前で、ハンガーを外しては戻す作業を何度も繰り返しました。鏡を見るたびに浮かぶのは、自分の姿より先に彼の顔です。結局選びきれないまま、紺のブラウスを着て駅へ向かいました。

待ち合わせのたびに聞く言葉

「その服、似合わない」

改札を出た私の服に一度だけ目をやって、彼はそれだけ言うと先に歩き出しました。袖口を指でつまみながら、後ろをついていきます。

付き合って1年、この言葉を聞いた回数を数えるのはもうやめていました。紺やグレーの落ち着いた色を中心に、昔から好きで選んできた服ばかりです。友人と出かけたときには、褒められたこともありました。

それでも彼に言われるたびに、その服はクローゼットの奥へ移っていきました。新しく買い足しても、また同じ言葉が返ってきます。どこが悪いのか聞けばいいのに、聞いたら全部を否定されそうで、口にできずにいました。

「じゃあ、どれなら似合うの」

その日、駅ビルの服屋の前を通りかかったとき、とうとう聞いてしまいました。

「じゃあ、どれなら似合うの」

責めるような声になったのが、自分でも分かりました。彼は少し黙ってから店に入り、何着か見比べてから、1枚のブラウスを私に差し出します。

紺色の、襟の小さなブラウスでした。試着室の鏡に映った姿は、さっきまで着ていた服とほとんど変わらないように見えます。カーテンを開けると、彼は私を見て「うん」とうなずきました。

色も形もほとんど同じなのに、私が選べば似合わなくて、彼が選べば正解になる。レジで袋を受け取りながら、自分の目がすっかり信用できなくなっていました。

次のデートには、そのブラウスを着ていきました。彼のお母さんに会うとは、思いもせずに。

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