
「その服、似合わない」が口癖の彼→彼が選んだ服で出かけた日、商店街ですれ違った彼の母の一言
コラム
商店街ですれ違った人
駅から少し離れた商店街を歩いていたとき、小さな店の扉が開き、じょうろを手にした女性が出てきました。一度だけ食事をしたことがある、彼のお母さんです。
お母さんは足を止め、私の姿を上から下まで眺めました。
「形がよく合ってるわね。よく似合ってる」
褒められたはずなのに、うまく笑えませんでした。彼が選んだ服だから似合っている。そう言われた気がしたからです。
お母さんは、今度は彼のほうを向きました。
「あんた、ちゃんと言えたの?」
「……まだ」
彼は足元を見たまま、短くそう答えただけです。お母さんは首を横に振り、私に会釈して店の中へ戻っていきました。
帰り道、隣を歩く彼は何も話しませんでした。ちゃんと言えたの、とは何のことなのか。私に伝えなければいけない何かが、彼にはあるのだと思いました。
そして...
帰宅してから、クローゼットの服を並べ替えました。彼が選んだブラウスを手前に掛け、自分で買った服を1枚ずつ奥へ寄せていきます。
同じ紺の2枚を見比べても、違いは最後まで分かりませんでした。
彼がまだ言えていないのは、別れ話なのか。それとも、私の知らない何かなのか。見当もつかないまま、クローゼットの扉を閉めました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)





























