
3か月前に髪を切った彼女に「髪、切ったの気づかなかった」と言った俺→閉じたノートパソコンの中身
コラム
画面に並んだ写真の中で、ある月を境に、彼女の髪があごのあたりまで短くなっていました。どれも俺が撮った写真なのに、切った日のことが思い出せません。台所の水の音が止まったので、慌ててノートパソコンを閉じました。
記念日に渡すつもりだったもの
付き合って2年の記念日に、写真をまとめた1冊を贈るつもりでした。スマホに残る彼女の写真を月ごとに選び、ネットで製本を頼む準備を、彼女が部屋に来ない日に少しずつ進めていたのです。
その日は残りのページを埋めたくて、彼女が洗い物をしている間だけ画面を開いていました。写真の日付をたどると、髪が短くなったのは3か月前。ちょうど仕事の資料に追われていた時期です。部屋に入ってきた彼女が髪に手をやっていた姿を、うっすら覚えています。顔も上げずに、おかえりとだけ返したことも。
「あのとき」が消えた理由
戻ってきた彼女の髪を、しばらく見ていました。写真と同じ、あごのラインの長さです。
本当は、写真を整理していて分かったこと、あのとき髪を切ったのに気づかなかったこと、その両方を話して謝るつもりでした。ただ、写真の話をすれば記念日の贈り物が分かってしまいます。前半を飲み込むうちに、「あのとき」まで一緒に消えてしまいました。口から出たのは、後半だけです。
「髪、切ったの気づかなかった」
「切ったの、3か月前だよ」
すぐに返ってきた彼女の声は、笑っているのに平らなまま。続けて言うはずだった「ごめん」は、そこで行き場をなくしました。
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開けなかったノートパソコン




























