赤信号のたびに彼女の手を離していた僕が、改札で「いつも、ありがとう」と言った理由

コラム

改札の前で言えなかったこと

並んで横断歩道を渡り、そのまま駅までの道へ。途中で一度、右手を彼女のほうへ伸ばしかけて、やめました。拭いてから、少し時間がたっていたからです。湿っていたら、と思うと、手は元の位置へ戻っていました。

そのとき初めて、彼女の手が来るのを待つばかりだった自分に気づきました。手のひらばかり気にしている間、繋ぎ直す役を8か月ずっと彼女に任せきりにしていたのです。

改札の前で足を止めました。

「いつも、ありがとう」

「何が?」

体育祭の話から始めるには、改札の前は短すぎました。

「なんでもない。またね」

ICカードをかざして、ホームへ続く階段を上りました。

そして...

次のデートで、最初の赤信号につかまったときのことです。いつものようにポケットで手を拭き、今度は青に変わる前に、自分から手を出しました。彼女は僕の手を少し見てから、そっと握ってくれました。

ハンカチは、今もポケットに入っています。体育祭の話は、まだできていません。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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