
俺がいつも通路側の席に座るのは、学生時代のある失敗のせいでした
コラム
学生時代のある失敗
学生時代、居酒屋でアルバイトをしていたことがあります。入って2か月ほどの頃、料理を運ぶ途中で、通路側に座っていた女性の背中にトレーをぶつけてしまったのです。グラスが倒れ、淡い色のワンピースの背中が濡れていきました。
「大丈夫です」と女性は笑ってくれました。けれど、向かいの男性がつぶやいた「今日、誕生日なのにね」という声が、ずっと耳から離れませんでした。店長と何度頭を下げても、あの日の食事は戻りません。
あの失敗以来、店では通路側に自分が座るようになりました。人が通る側に俺がいれば、何かあっても濡れるのは俺で済むと考えたのです。
そして...
駅までの道で、何度か切り出しかけてはやめました。横断歩道の手前で信号が赤に変わったところで、ようやく足を止めます。
「さっきの話だけど」
話し終えるまで、彼女は口を挟みませんでした。
「それ、最初に言ってくれたらよかったのに」
少し笑ってそう言った彼女は、次に行ったカフェで「今日は私がこっち」と通路側の椅子に座りました。壁側のソファに座った俺は、トレーを持った店員さんが通るたびに、彼女の背中のほうへ目をやってしまいました。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)




























