
始発の改札で駅員と敬礼を交わす小学生→毎朝見ていた私が、母親から聞いた話
コラム
返してもらえなかった数か月
「この子、春に1年生になったんです。私の仕事の都合で、実家に預けてから学校へ行くことになって、それからずっと始発で」
電車と駅員さんが大好きで、初めて始発に乗った日、改札を抜けるなり振り返り、制服の駅員さんに敬礼したのだそうです。
「でも、返してもらえるようになったのは、夏の終わりなんです。それまでは毎回、目をそらされていて」
改札を振り返ると、窓口の駅員さんは次の乗客の定期券に目を落としていました。春から夏の終わりまで、男の子は返ってこない敬礼を毎回続けていたことになります。私が見てきたのは、そのあとのほんの1か月分にすぎなかったのです。
「どうして急に返してくれるようになったのか、私にも分からないんです」
ホームに電車が入ってきて、男の子が「来た!」と振り向きました。
そして...
次の日も、男の子は改札の内側で足を止めて「おはようございます!」と敬礼し、駅員さんの右手も帽子のつばに上がっていました。
そのあと改札を通るとき、私も初めて窓口に向かって「おはようございます」と声をかけてみたのです。少し遅れて、「おはようございます」と返ってきました。
何か月も目をそらしていた敬礼に、あの人は夏の終わり、なぜ手を上げるようになったのでしょう。帽子のつばに添えられた指先を見るたび、その答えを考えるようになりました。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)





























