親友に引っ越しを言えないまま街を出た私が、書いては消した返事に書けなかったこと

コラム

スマホが短く鳴ったのは、段ボールをようやく片づけ終えた部屋でした。親友からのメッセージには、誕生日プレゼントが戻ってきたと書かれています。その宛先は、私がもう住んでいない、前の部屋でした。

言い出せなかった辞令

転勤の辞令が出たのは、引っ越しのわずか3週間前でした。1年前に親友が近くへ越してきてから、2駅の距離で会うのが当たり前になっていた私たち。「近くにいてくれて心強いよ」と言われるたびに、笑ってうなずいてきました。

だからこそ、離れることをどう切り出せばいいのか分からなかったのです。口にすれば、その日から本当に遠くへ行くことが決まってしまう気がしました。

そんなとき届いたのが、「仕事落ち着いたら、駅前のカフェ行こうね」。「うん、行こう」と返して、その日に会って話そうと決めました。引っ越したあとでも、電車で戻ってくればいい。そう言い聞かせて、何も伝えないまま街を出てしまいました。

書いては消した返事

「誕生日プレゼント送ったら戻ってきちゃった。住所、変わった?」

あの子は、前の部屋に誕生日の荷物を送ってくれていたのです。最も避けたかった形で、引っ越しを知らせることになりました。

返事を打っては消しました。転勤のこと、3週間しかなかったこと、カフェの日に話すつもりだったこと。どれを書いても言い訳に読める気がして、全部消していきます。結局送れたのは、短い返事だけでした。

「うん。引っ越したんだ」

送ってから、その素っ気なさに気づきました。あの子は今ごろ、これをどんな気持ちで読んでいるのだろう。

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2人で決めた合図
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