
「別れたい」と送ってきた彼女に、俺が言葉ではなく丸のスタンプを返したわけ
コラム
2年前に買って、一度も使わずにいたスタンプがあります。初めて送ったのは、彼女が別れを切り出した日でした。
その日、転勤先のワンルームで、通知音が続けて2回鳴りました。開いた画面には、彼女からの長い文章が並んでいます。俺が返信欄に打った言葉は、どれも送る前に消すことになりました。
打っては送れなかった返信
彼女とは付き合って2年。最後の1年は、俺の転勤で遠距離になっていました。転勤の話を受けたのは俺自身です。仕事に慣れるだけで手いっぱいで、電話はいつも「また今度ゆっくり話そう」で切っていました。
彼女の長い文章の最後と、その次の1通には、こう書いてありました。
「会えないのが寂しいって言うのも、もう疲れちゃった」
「別れたい」
読んですぐ、返信欄に「次の休みにそっちへ行くから、話そう」と打ちました。それを消して「転勤、断ればよかった」と打ち直し、それも送れませんでした。離れる道を選んだのは俺のほうなのに、待っていてほしいと書くのは都合がよすぎる気がしたのです。本当は、引き止めて断られるのが怖かっただけかもしれません。
あの日もらった丸を返す
付き合う前、2回目のデートの帰りに、俺はメッセージで気持ちを伝えました。
「ちゃんと言いたくて。付き合ってほしい」
彼女から返ってきたのは、白いうさぎが両腕で大きな丸を作って笑っているスタンプだけ。うれしくて、同じスタンプのセットをすぐに買いました。けれど、あのうさぎは彼女の返事のように思えて、一度も使えずにいたのです。
あの「別れたい」に言葉で返せば、何を書いても言い訳か、すがる文章になる。それなら、あの日もらった丸を、今度は俺から返そうと決めました。彼女が決めたことに、丸をつける。それが、俺に出せるただ1つの返事でした。
スタンプを送ってしばらくすると、彼女から返信が届きました。
「真剣に話してるのに、ふざけてるの?」
伝わっていないことは、すぐに分かりました。説明を途中まで打ちましたが、送信はしないまま。説明すれば、考え直す重さを彼女に渡してしまう。そう理由をつけて、短い一行だけを返しました。
「ふざけてない。元気でね」
彼女からの返信は、それきり届きませんでした。
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1年後に届いた一通


























