
「片づけたら?」俺の一言で本を手放した妻へ、古書店で買い戻した本と一緒に用意していたもの
コラム
古書店の新入荷の棚で
新入荷の棚の一角に、見覚えのある背表紙がまとまって並んでいたのです。ソファで妻が何度も開いていた日に焼けた文庫にも、表紙を眺めては棚に戻していた画集にも、もう店の値札が貼られていました。
覚えのある本を抜き取っていくと、両腕で抱えるほどになりました。数えると18冊。これで全部なのかは、自分では分かりませんでした。段ボールに詰め、自分の部屋のクローゼットの上の段の奥に押しこみました。本棚が届いたら、一緒に並べるつもりでした。その間も、妻は本棚の前を通るたびに、空いた段に目をやっていました。
3週間ほどたったころ、玄関を開けると、文庫を1冊持った妻が廊下に出てきました。
「この本、どうしたの?」
妻の手元を見てから、開いたままの自分の部屋をのぞくと、床に本が並べてありました。本棚が届くまで、あと1週間ほど。今話せば、贈り物もあの日の言葉足らずも、中途半端に伝わってしまうと思いました。
「それは、もうちょっと待って」
床の本を箱に戻し、最後に妻の手から文庫を受け取って、クローゼットの上の段へ箱を押し上げました。
そして...
本棚が届いたのは、それから1週間ほどたった、妻の誕生日の前の休日でした。古い棚が運び出され、新しい棚が組み上がると、妻はしばらくその前に立っていました。
クローゼットから段ボールを下ろして、ようやく話しました。片づけたらというのは、本を減らしてほしいという意味ではなかったこと。理由を言わずに、短い言葉で済ませてしまったこと。
妻は箱から1冊ずつ取り出して、目の高さの段に並べていきました。18冊を並べ終えても、下の段は半分ほど空いたままでした。そこに何を並べるかは、妻に任せることにしました。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























