
「先に寝てて」が続く夫を疑った私→書斎の引き出しで見つけた物の正体
コラム
便箋の1行目にあった宛名
1行目に書かれていたのは、女性の名前ではありませんでした。
「お義母さんへ」
夫が自分の母親を呼ぶときは「母さん」です。「義」の字がついているということは、宛先は私の母でした。その下の数行は、ペンで黒く塗りつぶされていて読めません。
知らない名前を探していたはずが、出てきたのは夫がいつも口にする母の呼び名でした。疑っていた自分が恥ずかしくなり、同時にわけが分からなくなりました。半月前に実家へ寄ったときも母は変わりなく、夫が手紙を書くような用事は思い当たりません。
どけたボールペンが元はどこにあったのか思い出せないまま、便箋の横に置いて引き出しを閉めました。帰ってきた夫は、短くなった襟足を手で触りながら、いつもと変わらない顔でソファに座りました。こちらから切り出すきっかけは、どこにも見当たらないまま。
そして...
その夜も、夫は食器を片づけると「先に寝てて」と言いました。
「うん」
返事はそれだけにして、寝室の明かりを消しました。少し開けたドアの向こう、廊下の先で、書斎のドアの下から細い明かりが漏れていました。
知らない女性の影は、もう頭の中にありません。代わりに残ったのは、塗りつぶされた数行のことでした。夫は私の母に、何を書こうとしているのでしょうか。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)




























