「先に寝てて」と妻に言い続けた俺が、書斎で義母への手紙に書けずにいた一行

コラム

便箋の横に移っていたボールペン

休日、美容院から戻って書斎の引き出しを開けると、便箋の上に置いていたはずのボールペンが、横に移っていました。妻が見たのだと、すぐに分かりました。宛名は読まれたでしょう。ただ、その下は全部塗りつぶしてあるので、中身までは伝わっていないはず。

その夜も、俺は「先に寝てて」と言いました。

「うん」

妻の返事は、それだけでした。引き出しのことも宛名のことも、何も聞いてきません。書斎のドアを閉めてから、手帳のメモを開きました。平気じゃないときほど平気と言う。義母が書いていたのは、ついさっきの妻のことでした。

そして...

次の日、妻に「お義母さんに、手紙書いてた」とだけ伝えました。

「そっか」

妻は洗濯物をたたむ手を休めずにそう言い、中身を聞いてはきませんでした。いつもなら、話はここで終わりです。俺は妻の隣に座り、顔を見てから聞きました。

「本当は、気になってたでしょ」

少しして、妻は小さくうなずきました。

「うん。ずっと気になってた」

その夜、塗りつぶし続けた行の下に、ようやく一文を書き足しました。「平気と言われたら、顔を見て聞き返します」。ポストに入れたのは、その2日後です。妻の口から「平気」以外の本音を聞けたのは、あのメモのおかげでした。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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