
「俺の給料で満足しろ」と言った俺→彼女の昇進祝いの個室で、同僚の前でありがとうと言われた
コラム
乾杯のあと、立ち上がった彼女はまっすぐ俺のほうを見ました。個室に響いたのは、反対し続けた俺にはまったく似合わない言葉でした。
リビングのテーブルに、分厚い問題集が置かれていました。同棲中の彼女が、会社の昇進試験を受けたいと言い出したのは少し前のことです。ページの角には、もう何枚も付箋が貼られていました。
食卓で言ってしまった言葉
「受かったら、帰りはもっと遅くなると思う」
彼女は箸を置いて、こちらの顔をうかがうように言ったのです。
「俺の給料で満足しろ」
考えるより先に、口から出ていました。無理をしてほしくない気持ちもあったはずです。それでも、ひどい言い方だったのは分かっていました。
彼女は何も言わずに食器を片づけ、その日から毎日問題集を開くようになったのでした。
反対の気持ちは変わらないまま、俺は彼女の分の食事にラップをかけて置いておくことだけ続けていました。一度だけ、彼女がその皿をスマホで撮っているのを見かけました。何のためなのかは、聞けないままでした。問題集の付箋だけが、日ごとに増えていったのです。
昇進祝いの個室
試験から1か月後、彼女は合格しました。
「部署のみんなが、お祝いしてくれるって。家族やパートナーも呼んでいいらしいから、一緒に来てほしい」
正直、気は進みませんでした。それでも断りきれずに、駅前の居酒屋の個室についていったのです。個室には、彼女の名前入りのカードがついた花束まで用意されていました。
彼女の同僚たちは、口々に彼女の頑張りを話してくれたのです。試験前は休憩のたびに問題集を開いていたと聞いて、自分が何も知らなかったことに気づきました。
乾杯のあと、彼女の上司がグラスを置きました。
「では、本人から一言」
立ち上がった彼女が、まっすぐ俺のほうを見たのです。
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個室で下げた頭


























