「奢られるのが当然だと思うな」と言った彼→誕生日の会計も割り勘、改札で渡された封筒

コラム

誕生日の会計でも、彼はいつものようにスマホの電卓を開きました。改札の前で渡された封筒は思ったより厚く、彼は「これ、家で開けて」とだけ言って……。

その2週間前、居酒屋のレジの前で、付き合って半年の彼がスマホの電卓を開きました。表示された数字を半分に割り、私の分を口にする。見慣れたはずのその光景に、あの日だけは軽口をはさみたくなったのです。

レジの前で返ってきた言葉

「3400円ね」
彼がそう言い、私は財布を開きながら笑いました。
「たまには奢ってくれてもいいのに」
軽い冗談のつもりでした。ところが彼は電卓の画面を見たまま、低い声で言いました。
「奢られるのが当然だと思うな」
「冗談だよ」と返しても、彼は小さくうなずいただけでした。店員さんから受け取ったレシートを、彼は丁寧に折って財布にしまいました。
駅までの道、2人とも口数は少ないまま。
最初のデートで割り勘にしようと言い出したのは、私のほうでした。
「毎回奢ってもらうのって、借りができたみたいで苦手なの。普段は割り勘にしよう」
そう伝えたことは、よく覚えています。それでも半年の間、彼が会計を持ってくれたことは一度もありませんでした。

誕生日に予約されたお店

2週間後は私の誕生日でした。彼が予約してくれたのは、駅から少し歩いたところにある洋食店です。
窓際の席で、彼はメニューを見ながら「好きなの頼んで」と言いました。その一言に、少しだけ期待してしまった自分がいます。
料理はどれもおいしく、デザートには小さなろうそくが立っていました。彼が拍手をしてくれて、素直にうれしかったのも本当です。
食後のコーヒーが空になったころ、店員さんが伝票をテーブルに置きました。
彼の手が、すっとそれに伸びていきました。

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