「俺の給料で満足しろ」と言った彼→私が昇進祝いの次の週に連れて行きたかった場所

コラム

試験勉強の間、ラップのかかった皿を、私は毎回スマホで撮っていました。個室で彼が頭を下げたとき、思い出したのはその写真のことでした。

彼が作る料理の中でも、豚の角煮は特別でした。付き合い始めたころ、いつか小さな食堂をやってみたかったと、彼が一度だけ話してくれたことがあります。調理師学校の資料まで取り寄せたものの、仕事を辞めて通う余裕はないと諦めたそうです。無理だと笑って、それきりその話はしなくなりました。

試験を受けると決めたわけ

昇進すれば、私の収入は今より増えます。これまでの貯金と合わせれば、彼が仕事を辞めて学校に通う間も、2人で暮らしていける計算でした。
ただ、それを先に話せば、彼はきっと遠慮します。受かって、本当に彼を支えられると分かってから話そうと決めていました。食卓で、私は箸を置いて切り出しました。
「受かったら、帰りはもっと遅くなると思う」
「俺の給料で満足しろ」
食器を片づけながら、正直かなり腹が立っていました。それでも、問題集を開くことだけはやめなかったのです。

ラップのかかった皿

帰りが遅くなっても、テーブルにはいつも私の分の食事が置いてありました。反対していたはずの彼が、毎回ラップをかけてくれていたのです。角煮の日は、ラップの内側が湯気で白くくもっていました。
その皿を、私は彼に見られないように、毎回スマホで撮っていました。反対してたくせに。撮るたびにそう思いながらも、遅く帰る私の食事を作り続けてくれたことを、忘れたくなかったのです。
合格の知らせが届いたとき、写真はもう40枚を超えていました。
「部署のみんなが、お祝いしてくれるって。家族やパートナーも呼んでいいらしいから、一緒に来てほしい」
彼が来てくれるかどうかは、半分賭けでした。

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個室で頭を下げた彼
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