「猫を飼う女は寂しい女」と言った彼→うちの猫に懐かれなかった話

コラム

台所から戻ると、彼は床に腹ばいになってベッドの下をのぞき込んでいました。小さな声で何を話しかけていたのか、私には聞き取れなかったのです。

玄関のドアを開けた途端、キャットタワーの上の猫がさっと床に飛び降りました。付き合って3か月の彼を、初めて部屋に呼んだ日のことです。猫はそのままベッドの下にもぐり込み、出てこなくなりました。

キャットタワーを見て

彼は部屋の隅のキャットタワーを見上げて、ふっと笑いました。
「猫を飼う女は寂しい女」
3年前に保護猫の譲渡会で出会ったこの子は、私にとって家族です。
「この子、家族なんだけど」
「そういう意味じゃない」
彼はそれだけ言って、ソファに腰を下ろしました。
私はキャットタワーに残る爪とぎの跡を、なんとなく指でなぞります。
家族なのに…。
寂しさの埋め合わせのように言われた気がして、その日は口数が減りました。
彼はどういう意味なのか、最後まで説明してくれません。
ベッドの下の暗がりで、猫の目だけが光っていました。

床に座る彼

それからも、彼は週末になると部屋に来るようになりました。
猫は彼の足音が聞こえるだけで、ベッドの下に逃げ込みます。
何週間たっても、彼の前に猫が出てくることはありませんでした。
不思議だったのは、彼がソファではなく、ベッドの近くの床に座るようになったことです。
スマホを見るでもなく、ただ壁にもたれて座っています。
猫のことは嫌いなのだろうと思っていたので、その姿がどうにも腑に落ちませんでした。
ある日、台所でお茶をいれて戻ると、彼は床に腹ばいになっていました。
ベッドの下をのぞき込んで、何か小さな声で話しかけているのです。

次のページへ

聞こえなかった言葉
  • X
  • Line