花火を子どもっぽいと言った俺が、会場が開く前から土手の一番前に座り続けていた事情

コラム

去年の帰り道、彼女がぽつりと漏らした言葉を、俺は忘れていませんでした。一日がかりでシートに座っていたのは、その言葉に応えるためです。

青いレジャーシートの上で、何本目か分からないペットボトルを空にしました。川に一番近いこの場所を取るために、会場が開く前から並んでいたのです。首の後ろが、じりじりと痛み始めていました。

去年の帰り道

付き合って2年、毎年この花火大会には2人で来ています。去年は着くのが遅れて、人混みの後ろから、ほとんど見えないまま終わりました。帰り道、彼女がぽつりと言ったのです。

「子どもの頃みたいに、一番前で見たかったな」

聞けば、彼女のお父さんが毎年朝早くから場所を取ってくれていたそうです。その話をしたときの彼女は、少し照れたように笑っていました。その役を、今年は俺がやろうと決めたのです。

言い間違えた一言

駅前でポスターを見つけたとき、彼女が何か言いかけたのが分かりました。誘われたら、うっかり計画を話してしまいそうです。とっさに目をそらして出たのが、あの言葉でした。

「花火なんて子どもっぽい」

彼女は黙ってポスターの前を離れていきました。ひどい言い方だったと分かっていても、当日まで知られたくなかったのです。

当日も「今日は予定がある」とだけ送りました。予定というのは、この場所取りのことでした。

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階段の下で待つ
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