
「お前の親の介護なんか知らない」と言った夜から、俺は妻に何も聞けなくなっていた
ライフスタイル
口にした瞬間から、ずっと後悔していました。取り消せないとわかっていても、謝ることもできないまま、時間だけが過ぎていったのです。
できない自分を認めたくなかった
義母の介護が始まってから、妻の帰りが遅くなりました。週に何度も義実家へ通い、ケアマネの名前を覚えて、介護記録をノートにつけていた。自分には何もできない、という感覚がじわじわと大きくなっていきました。
「一度、一緒に来てほしい」と言われるたびに、どうすればいいかわからなくて「わかった」と言って忘れていました。情けないとは思っていました。でも認めたくなかった。何もできていない、という事実を。
ある水曜の夜、23時を過ぎて帰ってきた妻に「もう少し協力してほしい」と言われたとき、溜まっていた何かが出てしまいました。「お前の親の介護なんか知らない」と。
消えなかった言葉
「お前の親の介護なんか知らない」。なぜそんな言葉が出たのか、今でもよくわからない。無力さを妻にぶつけて、矢印を逆向きにしたかっただけだったと思う。
言った瞬間、やってしまったと思いました。妻の顔が固まった。反論もせず、ため息もつかず、ただ部屋へ戻っていきました。「待って」とも「ごめん」とも言えなかった。
翌朝も、翌々朝も、妻は普通に朝食を用意していました。ただ、義母の話をしなくなっただけで。俺からも聞けなかった。謝ろうとするたびに、あの夜の妻の横顔が浮かんで、言葉を引っ込めていました。
次のページへ
父が倒れた夜
























