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    「そのカバン、私の方が似合うから頂戴」とベンチでねだるママ友。笑顔で渡すと、内ポケットの1枚で顔色が変わった

    ライフスタイル

    欲しいと言われたら、そのまま渡そう。そう決めていた私が笑顔で差し出したのは、前の持ち主のカードを内ポケットに入れたままのカバンでした。

    お迎えのあとの公園で、ママ友の目がまた私の肩のカバンに向きました。砂場では子どもたちがスコップを取り合い、ベンチには他のママたちも並んでいます。数日前から続くその視線に、もう気づかないふりはしないと決めていました。

    中古のカバンを笑われた日

    娘と同じ幼稚園に通う男の子のママは、人の持ち物をよくほめる人でした。ほめたあとに「それ頂戴」と冗談めかして言うことがあり、相手が困った顔をしても笑っている人でした。

    数日前、同じベンチで彼女が私のカバンを指さしました。

    「そのカバン、どこで買ったの?」

    「フリマアプリで見つけたの」

    「中古なんだ。誰が使ってたか分からないのに、よく平気だね」

    周りのママたちが曖昧に笑う中、私は持ち手を握り直しました。

    見覚えのあるクローバー

    半年前に同じ市内から届いた茶色の革のカバンは、片方の持ち手だけ縫い目の糸が少し明るい色をしています。内ポケットには、前の持ち主が添えたカードが入ったまま。「大切に使ってもらえたらうれしいです」というメッセージの横に、葉を4枚つけたクローバーが描かれていました。

    その夜、娘の机の引き出しから、先月の誕生日に彼女の家からもらったカードを探し出しました。

    2枚を並べてみると、クローバーの葉の描き方も、丸みのある文字の癖もよく似ています。「誰が使ってたか分からないのに」と笑った声が、頭の中でもう一度聞こえました。ただの偶然なのかどうか、私には確かめようがありません。

    ベンチでの笑い声を思い出しながら、カードを内ポケットに戻しました。自分から言い出すつもりはありません。欲しいと言われたら渡そう、とだけ決めていました。

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