
「甘えるな」と妻に言った俺→妻が出て行った日、冷蔵庫を開けて気づいたこと
コラム
妻がいなくなった家
翌日、仕事から帰ると家は暗いままでした。テーブルの上に手紙が一枚。
「"甘えるな"と言われた日から、あなたに何かを求めるのをやめました。だから、この家にいる理由もなくなりました」
読み終えて最初に思ったのは「大げさだな」でした。すぐ帰ってくるだろうと。
でも、冷蔵庫を開けて手が止まりました。小分けにされた離乳食のストック。日付のラベルが丁寧に貼られた作り置きの味噌汁。自分の弁当用のおかずまで、3日分。出て行く準備をしながら、それでも自分と娘の食事を用意していたのです。洗濯物もたたんでありました。妻がたったひとりで抱えていたものが、この家のあちこちに残っていました。
そして...
妻に電話をしました。「いつ帰ってくるの」と聞いたら、「帰りません」の一言。謝罪の言葉を言えなかった。言い方がわからなかったのです。
LINEを送っても返事はありませんでした。それでもまだ「いつまでそうしてるつもり」「大げさすぎないか」と送り続けていた自分を、母からの電話が打ち砕きました。
「お前は私がひとりで育てたと思ってるの? おばあちゃんが毎日来てくれてたでしょう。それも覚えてないの?ひとりで育てたなんて、私は一度も言ったことないよ」
言葉に詰まりました。母は続けました。
「お前がやったことは、嫁さんに"助けてって言うな"って言ったのと同じだよ。本当に情けない」
母が怒っているのではなく、悲しんでいるのが声でわかりました。自分が盾にした「強い母親像」は、自分が都合よく作り上げたものだった。母を傷つけ、妻を追い詰め、自分は何もしていなかった。
冷蔵庫に並んでいた作り置きのおかずは、気づけば三日ほどで全部なくなってしまいました。温めればすぐ食べられる状態が当たり前だと思っていたのに、空になった棚を前にして、初めて立ち止まりました。
これを毎日、時間をかけて用意してくれていたのは誰だったのか。仕事から帰って何も考えずに箸を伸ばしていた自分の姿が、急に恥ずかしくなったのです。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























