
誰にでも返信できたのに、彼女にだけ言葉が出てこなかった
コラム
12回書き直した一文
その夜は結局返せませんでした。翌朝、通勤電車の中で何度も文を打っては消しました。「ごめん」だけでは足りない。「忙しかった」は嘘になる。昼休み、12回目に打った文がこれでした。
「お前にだけ、何て返していいかわからなくなる」
格好つけたかったわけではありません。それが一番正直な言葉でした。送信した瞬間、手のひらが汗ばんでいることに気づきました。
そして...
既読はすぐにつきました。でも返信が来ない。1時間経っても、2時間経っても。ああ、これか、と思いました。彼女が毎日感じていたのは、この感覚だったのかと。画面を見つめたまま、喉の奥がぎゅっと詰まりました。俺はわかっていたのです。「言葉が出てこない」のではなく、失敗するのが怖くて逃げていただけだと。
あの一文は、本音であると同時に、俺の一番ずるい言い訳でもあったのです。次に彼女から連絡が来たとき、逃げずに返せるのか。画面の向こうで彼女が待っていた時間の重さを、俺は今ようやく、自分の番で知りました。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























