
冷蔵庫のラベルを見るたび昔のシェア生活がよみがえる。彼女に言えないまま、僕は全部はがしてしまった
コラム
彼女が貼ったラベルを、僕は一枚ずつはがしていました。調味料の瓶からも、棚のふちからも、きれいに片づくまで手を止められません。どうしてこんなことをしているのか、自分でもすぐには説明できませんでした。
気づいたら、はがしていた
彼女と暮らし始めてから、家の中はどんどん整っていきました。冷蔵庫の中も、調味料にも作り置きの容器にも、ラベルライターで名前や日付がきれいに貼られています。ありがたいことだと、頭ではわかっていました。
それなのに、彼女が出かけている間に、僕はそのラベルを一枚ずつはがしていたのです。瓶のふちにのりの跡が残っても、途中でやめることができませんでした。自分でもおかしなことをしている自覚はあったのに、止められなかったのです。
口をついて出た名前
彼女が帰ってきて、冷蔵庫の前で僕に聞きました。「ねえ、冷蔵庫のラベル、どうしてはがしたの」責める口調ではありませんでした。だからこそ、何と答えればいいのかわからなかったのです。気づけば僕は、こんな言葉を口にしていました。「前に一緒に住んでたナオが、ああいうの全部に貼る人で」彼女が「ナオって、誰のこと」と聞き返してきます。けれど、その先をどう話せばいいのか見つからず、僕は「ごめん、うまく言えない」と言って、その場を離れてしまいました。
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あの家での暮らし

























