
同僚の机を黙って直し続けた私は、「余計なお世話」の一言が怖くて理由を言えずにいました
コラム
謝罪だけを口にしたその日、退社後にあの机で何が起きるかは分かっていました。分かっていて、私は机の上には触れずに帰宅しました。
それを知ったのは、3か月ほど前のことです。人の減ったフロアに、台車の車輪の音だけが残っていました。残業を終えて振り返ると、隣の席のペン立てが横になり、ペンが床に転がっています。清掃の人はもう次の列へ進んでいました。それが、私が隣の机を直すようになったきっかけでした。
拾って立て直すだけのつもりでした
隣の席は私より遅く出社する同僚で、机の右の角が通路に少しだけ出ています。清掃の台車はその角をかすめて曲がるので、翌日には書類がずれ、ペン立てが倒れているのが決まりでした。
最初はペンを拾って立て直すだけでした。ただ、拾っているうちに書類の角も揃えたくなり、ペン立ては右の角から机の中央へ寄せ、カップが倒れたら困ると思って左の奥へ移すようになりました。
自分の机を付箋の向きまで揃えているのは、以前1枚の書類を失くして取引先に頭を下げた経験があるからです。その基準を、頼まれてもいない隣の机にまで持ち込んでいる自覚はありました。それでも、毎回お礼を言ってもらえるので、迷惑にはなっていないと思い込んでいました。
「ごめんなさい。もうしません」
取引先の書類を束の下に回したのは私です。付箋が外れかけていたので、剥がれないよう一番下に挟んでおいたつもりでした。それが原因で同僚が外出の時間をずらしたのは、戻ってきた顔で分かりました。
「私のデスク、勝手に触らないでもらえますか」
周りの席が私たちを見ています。私は同僚の机を一度見てから答えました。
「ごめんなさい。もうしません」
台車のことを話す機会は、そこにしかありませんでした。それなのに口から出たのは謝罪だけで、理由を言えば言い訳に聞こえる気がして、画面に顔を戻しました。本当は、言い訳だと思われることより、余計なお世話だと切り捨てられることのほうが怖かったのです。
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直さないと決めた4日間



























