横断歩道の旗振りおじさんを「暇な人」と思っていた私→娘の帰り道で知った、立ち続けるわけ

コラム

娘が初めて1人で帰ってくる日、私はコンビニの前で待っていました。お礼を伝えた私に、おじさんは短く答えます。その言葉には、聞き覚えがありました。

スーパーへ向かう途中の交差点には、いつも黄色い旗を持ったおじさんが立っていました。雨の日も、子どもが1人も通らない時間も、同じ電柱の横にいます。そこに立つ理由を、深く考えたことはありませんでした。

雨の日も同じ場所にいる人

娘が小学校に上がる前から、その姿は見かけていました。腕章もなく、誰かに頼まれた様子もありません。子どもがいない間は折りたたみ椅子に座り、宅配の車の運転手と笑いながら話していることもありました。

平日の昼間にずっとここにいるなんて、暇な人なんだろう。そう決めつけていました。

春休みに、娘と通学路を歩く練習をした日のことです。信号を待つ間、娘がおじさんを見上げて「あのおじさん、だれ?」と聞きました。

「暇なのかな」

おじさんはすぐ横にいましたが、何も言わず、青になると旗を横に出しただけ。聞こえていたかどうかも、その時は気にしていませんでした。

初めて1人で歩く帰り道

入学して2週間がたち、娘が1人で帰ってくる初めての日が来ました。「もう1人で帰れるもん」と言い張る娘には内緒で、交差点の向かいにあるコンビニの前で待っていました。

横断歩道の向こうに、黄色いカバーをつけたランドセルが見えます。信号が青に変わった瞬間、娘は電柱の陰から走り出しました。そこへ、軽トラックが曲がってきたのです。

「止まって!」

おじさんが娘の前に出て、旗を突き出しました。娘は歩道の端で止まり、軽トラックもその手前で止まります。運転手が片手を上げて曲がっていくまで、エコバッグが足元に落ちていたことに気づきませんでした。

おじさんは娘の目の高さまでしゃがみ、電柱を指さして何か話していました。車の音で、こちらまでは聞こえません。次の青で、私は横断歩道を走って渡りました。

  • X
  • Line