彼のメッセージの最後には、いつも「これは俺の優しさ」。私はその一言を数え始めた

コラム

いちごの置き方、服の色。指摘のあとには、いつも同じ一言が添えられていました。返せるのは「ありがとう」だけ。メモの数字が10になった日、初めて別の返事を打ちました。

友人の誕生日用に焼いたケーキの写真を、彼に送りました。少しして届いたのは、いちごの置き方についての指摘です。最後に添えられていた一言を、何度も読み返していました。

会っていれば笑えた一言

「いちごの置き方、ちょっと雑じゃない?もう少しきれいに並べたら?これは俺の優しさ」

ほめてほしくて送った写真でした。「ありがとう」とだけ返したあと、スマホのメモを開いて「1」と打ち込みます。

彼とは付き合って2年。この言葉は、付き合い始めた頃からの彼の口癖です。寒がる私に上着を貸してくれたときも、買い物中に服の色を口出ししてきたときも、得意げな顔のあとで笑っていました。だから私も「余計なお世話!」と笑って言い返せたのです。

ところが、お互い仕事が忙しくなって会えない日が増えると、同じ言葉はメッセージで届くようになりました。画面には、彼の笑った顔は映りません。

数えるほど返しにくくなった「ありがとう」

「その色、あんまり似合ってないと思う。前の服のほうがよかったよ。これは俺の優しさ」

新しい服の写真を送ったときの返事です。会って言われたなら、きっと笑って言い返していたはず。けれど文字だけで届くと、本気で注意されているようにしか読めませんでした。

「ありがとう。参考にするね」

メモの数字は少しずつ増えていきます。写真の撮り方、話し方。どれも指摘のあとに同じ一言がついていて、反論すれば彼の「優しさ」を突き返すことになる気がしました。そのたびに、「ありがとう」とだけ返していたのです。

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