
彼のメッセージの最後には、いつも「これは俺の優しさ」。私はその一言を数え始めた
コラム
「数えてたんだけど、これで10回目」
友人と買い物をしてから映画に行く予定を送ると、彼から返事が届きました。
「予定詰め込みすぎ。そういう計画性ないところ、直したほうがいいよ。これは俺の優しさ」
メモに「10」と打ってから、チャット画面に戻ります。少し迷ったあと、初めて「ありがとう」以外の言葉を送りました。
「数えてたんだけど、これで10回目」
「最近、私にダメ出しするときばかり、その言葉使ってない?」
既読はすぐにつきました。返事が届いたのは、しばらく経ってから。
「ごめん」
「そんなに送ってたんだ」
「責めるつもりはなかった」
その言葉を、どう受け取ればいいのか分かりませんでした。それでも、本当のことは伝えておきたかったのです。
「会って話してたときは、笑いながら言ってたから、私も笑って返せたんだよ」
「でもメッセージだと、本気で注意されてるみたいで、ありがとうしか返しにくい」
「少し考えさせて」
画面には、その短い返事だけが残りました。
そして...
翌日、彼からメッセージが届きました。
「週末、どんな靴でもいいけど歩きやすい靴で来てね。たくさん歩くと思うから」
最後まで読んでも、あの一言はありません。ないほうが安心しました。けれど、彼の口癖を取り上げてしまったようで、返事の文面を何度も打ち直していました。
週末、少し早めに待ち合わせ場所へ着くと、彼はもう先に来ていました。どう声をかけようか迷っているうちに、彼のほうが私に気づきます。走ってきた彼は、あの得意げな顔をしていました。
「これが俺の優しさ!」
メッセージからは消えたあの一言が、久しぶりに彼の笑った顔と一緒に届きました。「少し考えさせて」のあと、彼は画面の向こうで何を考えていたのでしょう。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)






























