
「まだ使えるのに」とだけ言った俺が、妻の捨てたマグカップを4年間使い続けた理由
コラム
会社でずっと使ってた、とだけ
私物を持ち帰った次の日、家のテーブルでもいつもの習慣のまま、紙袋から出したそのカップにコーヒーを注ぎました。気づかれるかもしれない、とは思っていました。
「これ、私が捨てたやつだよね」
妻の目は、取っ手の付け根に向いていました。カップを両手で包むように持ち直し、言葉を探して、出てきたのはこれだけです。
「会社でずっと使ってた」
コーヒーを飲み干し、時計を見て立ち上がりました。画面の向こうの話から始めるには、出勤までの時間が足りない。そう自分に言い訳をして、流しでカップをすすぎ、水切りかごに伏せて家を出ました。
そして...
帰宅すると、青いカップは食器棚の手前、妻のマグカップの隣に並んでいました。
妻は何も聞いてきませんでした。俺も、まだあの1年の話を切り出せていません。次の日もそのカップにコーヒーを注ぐと、向かいの席の妻が、一度だけ取っ手のほうを見ました。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)






























