「稼ぐ女は可愛くないよ」と笑った彼。会社がなくなり、私の稼ぎに助けられた2カ月

コラム

閉じたドアの前で

昇進を伝えたあの日の笑い声を、何度も思い出しました。稼ぐ女が可愛くないなら、その給料で暮らしている今をどう思っているのか。お礼の言葉を待っているのかどうか、自分でもよく分からなくなっていました。「悪い」と言うときの彼は、私の顔ではなく床のあたりを見ていました。

彼がスーツ姿で出かけていく日も、何度かありました。行き先は言わず、帰ってくるとまた奥の部屋へ。閉じたドアの前を通るたび、ノックしかけた手を下ろしました。

そして...

会社が閉まって2カ月ほどたった頃の夕飯で、彼のほうから新しい就職先が決まったと話してくれました。こんなに長く彼の話を聞いたのは、久しぶりのことです。

最初の給料が出た日、彼はテーブルに白い封筒を置きました。

「助かった。ありがとう」

中にはお札と、日付と金額が並んだメモ。家賃と光熱費に加えて、私が買ってきた食材の代金まで書き出してありました。見覚えのある、右上がりの彼の字です。

引き出しから、裏返したままだった辞令のコピーを出して、封筒の隣に置きました。彼の視線が紙の上で止まり、それから私の顔に移りました。

辞令を見せたあの日、どうしてあんなふうに私を笑ったのか。封筒を受け取った今も、その答えだけはまだ聞けていません。

(20代女性・営業職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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