遠足のたびにクッキーを焼いていた私が、ママ友の市販のお菓子にあんな一言を言った理由

コラム

通路の向こうから差し出されたのは、3日前に私が笑った袋に入っていた飴でした。膝の上のクッキーの箱を、私はバスの中で一度も開けませんでした。

遠足の前日、オーブンのタイマーが鳴るたびに、天板のクッキーを網の上へ移していきました。粗熱が取れるのを待つ間、2日前に門の前で口にした言葉ばかり思い返していました。

クッキーを焼き始めたきっかけ

きっかけは、娘が年少だった頃の親子遠足でした。スーパーで買ったお菓子を袋に詰めていると、遊びに来ていた義母がそれを見て言いました。

「市販のお菓子ばっかりじゃ、かわいそうよ」

責めるような口調ではありませんでした。それでもその日から、行事のたびにクッキーを焼き、出来上がりの写真を義母に送るようになりました。「上手ね」と返ってくると、それだけでほっとしたものです。

親子遠足の3日前、園の門の前で娘を遊ばせていると、向かいのスーパーから戻ってきたママ友の手元の袋を、思わずのぞき込みました。グミと小袋のスナック、それにレモンの飴。気づいたときには、口が動いていました。

「手作りじゃないの」

少し笑ってしまったことは、自分でも分かっていたのです。ママ友は「うん、今回はこれで」とだけ返し、袋の口を折りました。市販のお菓子をためらわずにカゴへ入れられるママ友が、どこかうらやましかったのだと思います。

保冷バッグの中にあったもの

親子遠足の当日、公園でのおやつの時間には、いつものように箱いっぱいのクッキーを広げました。少し離れたシートには、グミを1つずつ友達に配るママ友の息子さんの姿。

帰りのバスでは、通路を挟んでママ友と息子さんの隣の席になりました。走り出してしばらくすると、窓にもたれていた娘が小さな声で言いました。

「ママ、きもちわるい」

保冷バッグから箱を出しても、娘は首を横に振るだけ。水筒を差し出しても、娘は口をつけようとしません。バッグを何度開け閉めしても、中にはクッキーと水筒しか入っていませんでした。

「よかったら、これ」

通路の向こうから、ママ友が個包装の飴を2つ差し出していました。

次のページへ

開けないままの箱
  • X
  • Line