「お前の作った飯、まずい」と送ってきた彼→3日後、なぜか同じ甘い卵焼きの写真が届いた

コラム

普段は名前で呼んでくれる彼から届いたのは、「お前」で始まる一行でした。短く返したきり、既読のまま3日が過ぎていきました。

会社の休憩室でお弁当のふたを開けると、卵焼きが2切れ並んでいました。前の日に彼の分とまとめて焼いた、いつもの甘い味です。1切れ目をかじったところで、机に置いたスマホが短く鳴りました。

卵焼きに返ってきた一行

彼とは付き合って1年半で、住まいは電車で4駅離れています。会うたびに、作ったおかずを保存容器に詰めて渡すのが、いつの間にか2人の習慣になっていました。

前の日も、改札で紙袋を渡して別れたあとに、メッセージを送っています。

「卵焼きと煮物、明日のお弁当にでもしてね」

その返事が、さっきの通知でした。

「お前の作った飯、まずい」

箸の先に残っていた卵焼きを、お弁当箱の隅に戻しました。この甘さは、実家の台所で母の横に立って覚えたものです。

普段の彼は、私を名前で呼びます。文面に並んだお前という呼び方が、しばらく目から離れませんでした。煮物のことなのか卵焼きのことなのか、画面を何度見返しても分かりません。

既読のまま過ぎた3日間

休憩が終わる前に、1度だけ返信を打ちました。

「そっか。もう作らないね」

既読はすぐにつきました。けれど、彼からの返事は届かないまま。

家に帰ると、冷蔵庫の卵のパックを奥へ押しやり、砂糖の袋は口を輪ゴムで留めて棚の上に上げました。次の日からのお弁当箱は、洗ったまま水切りかごに伏せてあります。

あの保存容器の中身は、今頃ゴミ箱に入っているのだろうか。そう考え始めてから、仕事中はスマホを裏返して置くようになりました。次の待ち合わせを尋ねる文面を打ちかけては、送らずに閉じる。その繰り返しで3日が過ぎたころ、ようやく彼の名前で通知が届きました。

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写真の端にあった札
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