彼女の「おやすみ」を既読のまま朝まで返せなかった俺→改札で別れた夜、ベランダで書いたノートの数行

コラム

「ちゃんと好きって言ってほしかっただけなの」。その言葉に返す文章を、スマホの画面の上では、どうしても作れませんでした。だから俺は、部屋の引き出しを開けたのです。
ベランダの手すりの前で、俺はノートを1冊広げました。付き合って2年になる彼女のメッセージを読んでから、まだ一言も返事を送れていません。手にしたボールペンは、インクが少しかすれていました。

言葉が苦手

昔から、気持ちを言葉にするのが苦手でした。特に「好き」という言葉は、口に出そうとすると照れくさくて、つい笑ってごまかしてしまう癖がありました。
帰り道に「最近、全然好きって言ってくれないよね」と言われたときも、そうでした。困ったように笑うことしかできないまま、改札で彼女と別れてしまいました。
改札で彼女に背を向けてからも、どうしてあそこで一言返せなかったのかと、駅のホームでずっと考えていました。

打っては消した返事

家に着いてしばらくすると、彼女からメッセージが届きました。
「今日はごめんね。言いすぎた。でも、ちゃんと好きって言ってほしかっただけなの。おやすみ」
すぐに開いて、返事を打ち始めました。けれど「俺も好きだよ」と打つと軽すぎる気がして、長く書こうとすると言い訳のようになりました。
画面の中で文章を作っては消すうちに、1時間がたっていました。適当な言葉を送るくらいなら、ちゃんと書きたい。俺は引き出しから、1冊のノートを取り出しました。
付き合い始めてから、口で言えなかったことを書きためてきたノートです。彼女の笑い方、待ち合わせで手を振る姿。2年分の、言いそびれた「好き」が並んでいました。

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