
「もっと稼げる男と付き合えば?」と言った彼が、給料日に私の部屋で差し出した白い封筒
コラム
「これ、受け取ってほしい」。テーブルの上に置かれた白い封筒を、私は開けずに押し返しました。彼が帰ったあとも、封筒はテーブルの真ん中に残されたままでした。
カフェのテーブルで、友人から届いた写真を彼に見せていました。友人が恋人から贈られたという、有名ブランドのバッグの写真です。軽い世間話のつもりだったのに、彼の顔から少しずつ笑みが消えていきました。
思わず出た「いいなあ」
「いいなあ、こういうの」
写真を見ながら、つい口にしていました。欲しいというより、うらやましいという気持ちに近い一言です。
ところが付き合って1年の彼は、スマホから目をそらして言いました。
「もっと稼げる男と付き合えば?」
彼は笑ってもいませんでした。
「そういう意味じゃない」と慌てて返しても、彼はカップを持ち上げたまま黙り込みます。その日は、どこかぎこちないまま駅で別れました。
帰りの電車で、友人の写真をもう一度開きました。何がいけなかったのか分からないまま、画面を閉じたのを覚えています。
給料日のメッセージ
それから数日、彼からの連絡は短いものばかりでした。こちらも意地になり、自分から謝ることはしませんでした。
給料日になって、彼からメッセージが届きました。
「仕事終わり、銀行寄ってから行く」
銀行に何の用があるのかは、書かれていません。
私の部屋に来た彼は、上着も脱がずにテーブルの前に座りました。いつもなら真っ先に冷蔵庫を開けるのに、この日は鞄を膝に抱えたままです。
やがて彼は鞄から白い封筒を取り出し、私のほうへ滑らせました。
「これ、受け取ってほしい」
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開けなかった封筒


























