
嘘をついて妻の実家に行かなかった俺→妻の実家で、俺がずっと面倒だったこと
コラム
玄関で画面を向けた妻の前で、俺は片方の靴を脱いだまま足元を見ていました。大学の友人には笑って話せたことを、妻にはまだ一度も話していませんでした。
その数時間前、氷の鳴るグラスの向こうで、友人が箸を置きました。妻の実家に行かずに済んだ話を、俺が笑い話にした直後のことです。その日、俺がいるはずだったのは、この居酒屋ではありませんでした。
妻の実家で、俺が面倒だったこと
結婚して3年。連休が来るたび、妻は俺の実家へ来て、母と並んで台所に立ってくれました。不満を聞いたことは一度もありません。
俺のほうは、妻の実家に行くのが面倒でした。
義父には敬語で話し、義母に仕事のことを聞かれれば、きちんと答えなければなりませんでした。親戚が来れば名前を覚え直し、笑顔であいさつを繰り返しました。
妻の家族が嫌いなわけではありません。自分の家なら寝転がれるのに、あの家では姿勢を正していなければならない。それがわずらわしかっただけです。
前回は相づちも省き、スマホを触って時間をやり過ごしました。帰りの電車では目を閉じて寝たふりをし、家に着くころにはぐったりしていました。
「仕事」と言ってしまった日
帰省が近づくと、義父と何を話すかを考えるだけで気が重くなりました。
前日、台所で皿を洗う妻の背中に言いました。
「ごめん、明日は仕事になった」
少し間があって、妻は答えました。
「……分かった。お母さんには言っとく」
休日出勤なら、責められない。そう計算していました。
当日、俺は大学の友人たちといつも集まる繁華街の居酒屋にいました。敬語もいらず、話したいことだけを話せる場所です。2杯目が空いたころ、「仕事」の中身を笑って話すと、友人の1人が箸を置いてこちらを見ました。
「奥さんには話したの?」
俺はグラスを置き、首を横に振りました。妻とGPSで位置を共有していることも、頭から抜けていました。
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玄関で、片方の靴を脱いだまま





























