「遠距離で結婚とか無理」と改札で言った彼→数週間後、職場の異動通知に出てきた彼の名前

コラム

課長が開いた社内の異動通知には、彼の名前がありました。行き先は、私が働いている支店です。あの日の一言と、どうつながるのでしょうか。

その数週間前。新幹線の改札の前で、彼はキャリーケースの持ち手を握り直しました。月に一度、彼が私の街に来る週末は、いつもここで終わります。その日も、いつものように手を振って別れるはずでした。

改札前の一言

彼とは同じ会社の同期で、入社研修で知り合いました。付き合って2年、彼が遠くの支店に移ってからは1年になります。
発車の時刻が近づいたころ、彼は改札の方を見たまま言いました。
「遠距離で結婚とか無理」
「それ、どういう意味?」
「ごめん、電車来る」
私が聞き返しても、彼はそれだけ言うと、改札の向こうへ歩いていきました。
結婚の話をしたことは、それまで一度もありません。始まってもいない話を、先に断られた気分でした。帰り道、私は彼の言葉を頭の中で何度も繰り返しました。

短くなった返信

それから、彼のメッセージは目に見えて短くなりました。こちらから送っても、返ってくるのは「了解」や「おつかれ」ばかりです。
無理、の続きを聞くのが怖くて、私からも何も聞けずにいました。スマホを開くたびに、別れ話を切り出される場面ばかり思い浮かんだのです。
数週間後、職場で課長に呼ばれました。課長は私の直属の上司で、彼のことも新人の頃から知っている人です。
「来月から、うちの支店に1人来ることになった。同期だよね」
課長がそう言って開いた社内の異動通知には、見慣れた彼の名前がありました。異動先として書かれていたのは、今、私が働いている支店です。

  • X
  • Line