
「妻は俺の言うことを聞くんで」と座敷で言った夫→私の一言で先輩と席を立った
コラム
座敷に残されたのは、私と飲みかけのグラスだけでした。しばらくして戻ってきた夫と先輩は、外で何を話していたのか、一言も触れようとしません。
話は少し前にさかのぼります。ふすまを開けると、夫の職場の先輩が座敷の奥で手を振っていました。夫と3人での食事に誘われたのは、これが初めてです。乾杯のあと、先輩は少しあらたまった様子で夫のほうを向きました。
乾杯のあとに出た大阪の話
先輩は、夫が入社したころから面倒を見てくれている人です。私も結婚式で一度、挨拶をしたことがありました。
「来年の春から、こいつに大阪へ来てもらいたいと思ってるんだ」
先輩はビールのグラスを置いて、そう切り出しました。大阪には、先輩が責任者を務める新しい拠点があるそうです。転勤の話は、私には初耳でした。夫の横顔を見ても、表情は変わりません。
「奥さんはどう?」
先輩に聞かれ、私が口を開く前に夫が答えました。
「妻は俺の言うことを聞くんで」
夫はそう言って、軽く笑ってみせたのです。
思わず口から出た私の返事
結婚して3年、夫が人前でこんな言い方をするのを聞いたのは初めてでした。
先輩は「そうか、それなら話が早い」とうなずき、拠点の場所や住まいの話を続けます。私は箸を置いて、膝の上で手を組みました。住まいの話にまで進んだところで、口を閉じていられなくなりました。
「その話、私はまだ一度も聞いてないけど」
先輩は話を止め、「え、話してないの?」と夫に目を向けたのです。夫は手にしていたグラスを、テーブルにそっと置きました。
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ふすまの向こうへ出ていった夫





























