
財布を届けに行ったコスモス畑で、俺が丘の上から見た景色
カップル
「何になるのか、見に来たの?」と聞かれて、丘の上で見た景色が頭に浮かびました。それでも彼女の友だちの前で、口から出たのは別の言葉でした。
駐車場の空きを待つ車の列は、コスモス畑の入口までずっと続いていました。助手席には、彼女の財布。家を出る前に5回かけた電話は、どれも彼女につながらないままでした。
行ったことのなかった場所
「女子同士集まっていくところがコスモス畑?」
「そんなところ行って何になるの?」
彼女のスマホに並んだコスモスの写真を見て、俺はそう言って笑いました。花を見るためだけに車で出かける理由が、ピンとこなかったのです。コスモス畑には、一度も行ったことがありませんでした。
丘の上から探した白いカーディガン
当日、玄関の靴箱の上に財布が残っていました。財布がなければ、売店で何か買うことも、帰りに何かあったときも困るはず。「財布忘れてる。届けに行く」と送っても、既読はつかないままでした。
車の鍵を取って家を出たときは、財布を渡したらすぐ帰るつもりでした。
畑は、思っていたよりずっと広い場所でした。花の間の道を何本か歩いても見つからず、上から探そうと奥の丘へ上りました。
丘に上ると、足元から遠くまで、ピンクと白の花が広がっていました。風が吹くたびに、花の色が波のように揺れていました。探しに来たことを一瞬忘れて、しばらく眺めていました。スマホで1枚だけ写真を撮り、そこから白いカーディガンの後ろ姿を見つけて、丘を下りました。
次のページへ
言いそびれた感想


























